Thursday, November 19, 2015

インディーズ映画界が元気な国ーフィンランド

世界中のインディーズ映画界が沈んでいる中、フィンランドのインディー界が健闘しているという記事があったので紹介します。

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国からの援助に頼らないフィンランドのインディ映画界は、独自のストーリーテリング、ジャンル映画(アクション、サスペンス、ホラーなど)の面白さ、ニッチなフィクションやドキュメンタリーの増加に特徴があり、具体的には、フィルムノアール、詩的な小説のようなもの、SFものなどさまざまなタイプの海外映画から影響が見られる。

先日ヘルシンキで開催されたLove and Anarchy映画祭のフィンランドインディー映画プログラムに登場した映画のラインナップから以下のことが読み取れる。

1 作品が多様
ドキュメンタリー、アニメーション、短編などジャンルが多様であるだけでなく、内容も登山、スケート、フィリピンのトランスジェンダー支援運動の他、スウェーデンの映画監督とのコラボレーション作品など幅広い。中でも、恋愛関係の終焉について独特な雰囲気を持つ実験的な撮影方法を取ったコメディ「About Happiness」、ダイナミックなカメラワークで従来にドラマの撮り方に挑戦した「On Happiness」、48時間以内に作品を完成させる映画コンテスト「Uneton48」で制作されたアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「星の王子様」を元にした神秘的現実主義ラブストーリー「Night Goes Long」などが秀逸だった。他にも、ジャンル映画の作り方にこだわった「Guilt」があり、これは先日Raindance Film Festival(ロンドン)で最優秀初長編監督賞を受賞した監督の作品である。

2 興行成績への挑戦
大多数のフィンランド映画は国の支援により製作されており、インディー製作はそうスムーズにいくものではない。フィンランドでは国内製作作品が人気で、2014年の興行収入額トップ5のうち4作品がフィンランド国内製作の作品であるが、上位20作品の中でインディー製作されたものは1作品のみ。しかもこの作品は、ネパールの教育への投資資金を調達するために3人の男が小型トラックでヘルシンキからネパールまで旅するドキュメンタリーで、フィンランド初のクラウドファンディングで資金調達をした作品であるばかりでなく、興行収入はすべてネパールの教育資金として寄付されるというもの。

また、フィンランドではフィンランドらしくない作品は信用が薄く、従来の資金調達方法である国からの援助で製作された作品が好まれることが多い。フィンランドらしい作品とは、風変わりで一般社会から疎遠な登場人物がありとあらゆる手段を使って自己表現するものや、都市生活でからの逃避に関するものである。

3 アキ・カウリスマキの時代からの移行へ
国際的に最も名が通ったフィンランドの映画監督はアキ・カウリスマキであろうが、実験的で 無表情な登場人物が登場する彼の映画は、現代のフィンランド社会に向けて妥協のない批判を唱え続けるためフィンランドらしくないと相手にされず、商業的にもアート系映画界以外で成功することはめったいにない。

前日の「Guilt」を製作したMárton Jelinkó監督も同じ状況に直面しているようで、彼が作りたい大衆向けではない映画は、国内の既存の製作支援制度の中での資金調達は難しいと発言している。「Guilt」の製作資金10,000〜12,000ユーロはすべて監督の制作会社が調達したという。

だが、この作品は資金調達方法だけではなく他の面でも現在のフィンランドのインディーズ映画の典型である。それは、従来とは違うストーリーテリング手法を用いたジャンル映画で、その制作クオリティが高い点にある。

配給については、フィンランドのインディーズ映画は海外市場に岐路を見出しつつあると、フィンランドで唯一のインディーズ系映画配給をするMikka J. Norvantoは言う。彼が昨年製作したホラーコメディ「Bunny the Killer Thing」は、ヨーロッパ、北米およびオーストラリアの映画祭で上映された後、Raven Banner Entertainmentによる世界中での公開が決定し、その影響でその後も良い話が舞い込んできている。重要なことはその作品に合った観客を見つけることで、ネットフリックスやそれに似た国内プラットフォームの増加で状況ははるかに良くなっており、海外公開や海外にファンを持つこは夢ではなくなってきているとNorvantoは言う。

(元記事はこちら。長いので要約しています。敬称略で失礼しています)

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以前は、ジャンルに沿ったものを書かないとマーケットがないから売れない、と言われたものでしたが、最近は何でもありですね。上に出てくる「ホラーコメ ディ」などもすぐイメージできるようになりました。でももう既にジャンル名2つの単語の合成は使い尽くされてしまったように思います。次は3つかな。「ホラーラブコメドキュメンタリー」などがいかがでしょう、笑?

他の業界と同様ですが、インディーズ映画界もさまざまな部分で垣根が取っ払われつつあるので、それらがうまくつながる、うまく回るようになるまでの今の時期をどう過ごすかが、制作者にとっては重要ではないかと思っています。

自分の声をさらに育てながら、業界の動きに対して早すぎず遅すぎないスピードでやんちゃするのが目標です。

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