Wednesday, December 30, 2015

ドローンの使用 アメリカの場合(続)

アメリカでのドローンの使用について以前に書いたのですが、面白いことになってきているので続きを書きます。

以前のポストでは、アメリカでドローンを使用する人は連邦航空局に登録しないといけないこと、そして、その登録フォーマットはまだ発表されていないのに、登録を請け負う会社が出現している、ということをお伝えしました。

その後、登録フォーマットは予定通り発表され、12月21日から登録が開始されました。登録料は5ドル(たった5ドル!でも料金が発生するのがアメリカ社会!)ですが、最初の1ヶ月は無料だそうです。登録をしなかった場合の罰金は27,500から250,000ドルの間で刑事処分が伴う場合もあるとのこと。それから、趣味で使用する人はこれで登録完了だけれど、商業的に使用する人は更なる情報を登録しなければならないようで、その発表は2016年春になるそうです。

ここまではまあ決定事項のお知らせなんですが、面白いのはここから。
今回の新規定に関する連邦航空教のFAQと運輸省の発表内容に一致しない部分があるのを見つけたフォーブス誌が双方に問い合わせをしたところ、
 ー登録された内容のうち名前と住所と登録番号は一般に公開されるー
ことが明らかになったそうです。
でも、
 ー名前と住所は、プライバシー保護法によって保護されますー
と言われたそうです。

これってどういうこと?私の文章読解力に問題があるのかと思って何度も読み返してみたけどやっぱりそう書いてあるし、ネット上でも少なからず話題になっている。このドローンの登録は13歳以上なら誰でもできることになっているから、13歳の子どもの名前と住所が公開されるってことだ。ふーん、どうして趣味で飛ばす人の名前まで公開しないといけないんだろう?

ということで、この件は落ち着くまでまだ少し時間が掛かりそうに思います。今年はドローンが撮った映像、鳥の気分になれる映像をたくさん見たなぁ。早く映画で容易に使えるようになって欲しいでっす!





Tuesday, December 22, 2015

インディ・ジョーンズ ストーリー会議録(ルーカス・スピルバーグ・カスダン)

インディ・ジョーンズ レイダース/失われたアークのストーリー会議録があるなんて、最近まで知らなかった!

これは、製作総指揮・原案のジョージ・ルーカス、監督のスティーブン・スピルバーグ、脚本のローレンス・カスダンの3人によるストーリー会議の録音記録。脚本の1ページ目を書き始めるずっと前の、まだアイディア段階のものがどう進化していったかを目の当たりにできるすごい代物!

何がすごいって、3人それぞれの専門分野における能力が最高レベルで、それが合体したとき1+1+1が3でも5でも10でもなくて100になるのが見えること。

以下はこの会議録を読んでいて特にワクワクした点

1、まず最初にやったことは登場人物像を詳細まで詰めることであったこと。主人公の職業における専門分野や弱点だけでなく、服の素材や形、色、趣味やそれに関連する持ち物やその凝りようが分かる種類までをちょっとふざけすぎじゃないかと思うくらいまで面白ネタを豊富に盛り込む。一切のストーリー展開の話し合いを開始する前にこのレベルまで話し合われている。

2、物語の背景説明をどう見せるかについて、細かく設定し過ぎて後で調整ができなくて困るのではないかと懸念するくらいまで几帳面に決め込んでいたこと。地面の素材やムチの種類な形状、アクションシーンでの体の動きなどを、もちろん制作的な目線でも検討した上で決定してしまう。

3、アイディアがどんどん出て、すべてがビジュアル的であること。会話すべてが細部にわたっているし例えが具体的なのでイメージしやすい。例えば冒頭では「黒澤映画における三船敏郎みたいな」というような日本人にとっては嬉しくもある表現がされている。映画では制作過程で多くの人を巻き込み説得しなければならないので、とても重要だと思った。

いやあ、感動しました。 この会議録はこちらからご覧いただけます。





Tuesday, December 8, 2015

アメリカの映画・テレビ番組制作における税額控除

先日、メディア・サービス社主催の税額控除制度の説明会に参加してきた。

これはアメリカ各州の映像メディア(映画、テレビ、ミュージックビデオ、ウェブドラマなど、対象メディアは州により異なる)向け優遇税制を詳しく説明してくれるもの。メディア・サービス社というのは、アメリカ全土でエンタメ業界の会計や制作に関わるサービスをしている会社。

映画の制作費は多額なので、優遇税制を利用するのはほぼ必須要素。だから、アメリカででは当然多くの州で何らかの優遇税制が設けられている。その主なものは、助成金制度やロケ支援、税金免除、税金還付制度、税金移行制度などだ。

税制は、州によって設定項目や方法が違うため一概にどこが一番良いとは言えない。作品の規模や内容によってどの州が撮影にベストかは違ってくる。

とりあえず、最近の傾向と超低予算作品にとって良い州を探ってきた。内容は毎年のように変更されたり中止になったりしているので、ざっくりとしたリポートをする。

優遇税制のおかげで撮影が増えている州
 ・ルイジアナ州
 ・ジョージア州

  基本的な税控除率が高い上、利用すると更に税控除が増えるローカルサービス
  がたくさんある。例えばルイジアナ州では、州在住の脚本家や作曲家が参加
  すると控除率が上がる!これすごい。ルイジアナ州に引っ越して脚本を
  書いて、「私を雇ったら制作費浮きますよ!」と宣伝しようかと思った、
  笑。

超低予算作品に有利な州
 ・コネチカット州

  優遇税制を受ける条件が低くインディペンデント作品にやさしい。 最低制作費
  1,000万ドル(内容には条件があるが)から優遇制度がある!

優遇税制が中止されるのは、それによって州の財政がかえって苦しくなっているかビジネスの活性化につながっていないと判断された場合。ミシガン州、アラスカ州、マサチューセッツ州、そして現在多くの作品の誘致に成功しているルイジアナ州などが、今後の中止あるいは税率や控除税額に制限をつけることを発表している。ルイジアナ州は税額を無制限から1億8,000万ドルに制限するという、、調べたら今年はなんと16億ドルの赤字になりそうとのこと。

一方、カリフォルニア州、ペンシルバニア州、メイン州などは優遇制度の制限を緩めたり控除額を上げたりするようだ。

今回の説明会はアメリカのものだったのだけど、北米で一番優位な優遇制度があるのはカナダだ。カナダでは国と州の税制を合わせると、アメリカのどの州も競争にならないような高率な控除制度がある。

ということで、アメリカの優遇制度は今後も続くものの、内容はしょっちゅう変わることが予想される。特に共和党政権期間は反対勢力が力をふるう様子。


Thursday, December 3, 2015

アメリカのクラウドファンディング 新ルール

先日、アメリカの証券取引委員会(SEC)がクラウドランディングに関する新たなルールを発表した。

これまではほとんどのプロジェクトで、収益を募金者に分配するという設定はなされていなかった。これは禁止されていたわけではなく、SECの手続きが非常にややこしくお金もかかるため、それをやる人が少なかっただけだ。

でも今回、これが完全に許可されることになった。条件は以下の通り。

1. 年収または自己資産額が1,000万ドル以下の人が募金できる金額は、
2,000ドルか年収または自己資産額の5%のどちらか高い方。

2. 年収または自己資産が1,000万ドル以上の人が募金できる金額は、
年収または自己資産額の10%未満で、過去12ヶ月間の合計募金金額の上限は1,000万ドル。

3. ひとりのプロデューサーが集めることのできる金額は、
12ヶ月間に最高1億ドル。

このような数字設定になったのは、 大手映画会社スタジオがクラウンドファンディングを使って制作費を集めるのを制限する一方、インディーズ映画には制作に十分なお金が集まるようにという考慮された結果だ。これはとても大事な点で、アメリカのクラウンドファンディングではこれまでにも著名人や大手映画会社関連のプロジェクトが多額を集めて非難を受けていた。

今回発表された新ルールが適用されるのは、2016年1月29日から。
今後ますますクラウドファンディングが栄えそう〜。ラララ〜。

SECの発表はこちらで確認できます。


Tuesday, December 1, 2015

アメリカで人気のテレビ番組・映画配信サイト

アメリカでテレビ番組や映画をストリーミングサイトで見る場合、どこがよく利用されているでしょうか?

1位 Netflix (インターネット利用者の51%)
2位 Youtube (インターネット利用者の47%)
3位 Amazon (インターネット利用者の26%)
4位 Hulu (インターネット利用者の22%)
5位 HBO Go (インターネット利用者の13%)

Youtubeでは全編を見られるテレビ番組や映画は少ないことを考えると、本当に内容をしっかり見たい人が利用するサイトとしてはNetflixが圧倒的に強いということになる。
他のサイトもオリジナルコンテンツを作り巻き返しを図っているが、Netflixの勢いは留まるところを知らない。海外、特にヨーロッパでのNetflix市場は広まるばかりで、株価も今年だけでも2倍以上に伸びている。

Netfilxのコンテンツ別比較では、コメディよりドラマやアクションものがよい数字を上げているという。アメリカではコメディは激戦だ。他にたくさんのサイトがあってしのぎを削っている。またいつか紹介したいと思う。

HBO Goというのは、ケーブルネットワークのHBOが自社の番組を配信するもので、現在他ネットワークでも同様のシステムの導入を検討しているところがあるようだ。

最近は、劇場公開映画でも、劇場で公開を開始してすぐネット配信をしたり、先にネット配信を開始してから劇場公開する作品もある状態で、作品のタイプによって最善のマーケティング効果を目指してさまざまな策が取られている。

アメリカでは日本のように無料でテレビを見れないので、何を観るにしてもいくらかのお金を払うことになる。 だから視聴者はそれぞれが見たい作品をより安くより多く見られる手段を模索することになる。

映像作品はプラットフォームもコンテンツも増えているのでチャンスも多い、のは確かだけど、内容における競争は激しさを増している。

参考にした記事はこちら



Saturday, November 28, 2015

映画監督インタビューの最高峰:「ディレクターズ・チェア」

映画監督の本音、葛藤、裏話、秘けつが聞けるインタビューテレビ番組、それが、アメリカのケーブルチャンネル エル・レイ・ネットワーク(El Rey Network)「ディレクターズ・チェア(The Director's Chair」

このケーブルチャンネルは映画監督のロバート・ロドリゲスが創設したもので、「ディレクターズ・チェア」はロバート・ロドリゲスが著名な映画監督に、映画監督としての知識と経験があるからこそ尋ねることができる質問をぶつけ、通常のインタビューでは聞けない監督としての深い葛藤や本音を引き出すインタビュー番組。

シーズン1でインタビューされた映画監督は、
・ジョン・カーペンター
・クエンティン・タランティーノ
・ギレルモ・デル・トロ
・フランシス・フォード・コッポラ
・マイケル・マン
・シルベスター・スタローン
・ルイス・バルデス
・ロバート・ゼメキス
・ジョージ・ミラー

 私がこの番組を観ずにはいられない理由は以下の4つ。
・難しいショットの撮り方が分かる
・ビジネス面の難しさの詳細が聞ける
・著名な監督が新人時代をどう乗りこえたか聞ける
・情熱が映画を完成させることを再確認できる

要するに、知識と元気の両方をくれる番組です!
  
日本ではまだテレビでの放送はされてないようなのですが、すべてのエピソードをiTunesのアメリカサイトで観れます。

ロバート・ロドリゲスは、このケーブルチャンネルを基本的にはラテン系アメリカ人向けにの局としてスタートさせた。ラテン系と言っても英語を話すラテン系で、ラテン系である自身のような映画好きやフィルムメーカーを応援したい様子。

この番組の他にはシリーズもののアクションドラマやラテン系アメリカ人が制作または出演している映画などを放送している。また、人種に関わらずアマチュアフィルムメーカーの映像作品もオンエアできるよう門戸を開いていて、インディペンデントフィルムメーカーであり続けた彼の思いが存分に詰まった番組構成だ。

アジア人の私も存分に楽しんでおります、と彼に伝えたい、笑。




Sunday, November 22, 2015

一番印象に残っているアメリカ体験は?ー銃ー

一番印象に残っているアメリカ経験と言えばなんですか?
というような質問をときどきされるが、正直に答えたことはない。

いつも楽しい答えを言ってしまう。
例えば、テキサスバーベキューのブリスケットは死んでもいいと思うくらいおいしいとか、サラ・ジェシカ・パーカーをハンバーガー屋の前で見たとか、セントラル・パークであった友人の結婚式に出席して酔っぱらったとか、ニューヨーク・コレクションのバックステージ撮影に参加したとか、ソフィア・コッポラと同じ時間に同じ店で食事したとか。

でも、この質問をされて一番最初に頭をよぎることはそんなことじゃない。一番最初に頭をよぎるのは「銃」だ。


1 銃が目の前にある

ニューヨークは米国内で最も銃規制が厳しい州なので、銃を持っている友人は私の活動範囲にはいない。でも、銃は毎日にように目にする。なぜかというとほとんどの警官が腰に携帯しているからだ。警官は町中のあちこちにいるし地下鉄にも乗っている。こちらへ来て日が浅い頃は、警官の腰にぶらさがっている銃をよく知らない間に凝視していた。これは人を殺せるものだ、誤発射しないだろうか、どう見ても警官になって日が浅そうなこの若い警官にうまく扱えるのだろうか、流れ弾を避けるにはどこに隠れたらいいんだろうか、などとドラマの見過ぎか想像力が先走りする。


2 生の銃声を聞いた

確実に銃声と言えるものを初めて聞いたのは約2年前。ブルックリンの自宅で寝ていたら銃声が2発聞こえた。当時のルームメイトはフロリダ州出身のアメリカ人で銃に詳しく「2発目は人間の体にのめり込んだ音だった。今ここで確実に人が1人死んだ」なんて言うから、すっかりビビって、今できることは流れ弾に当たらないようにすることだ、と思いベッドの下に隠れて寝た。結局その後は何も起こらず翌日以降もギャング抗争などはなかった。

2回目は最近だ。友人宅でパーティをした後そのまま寝ていたら、パン、パン、パン、パン、パン、とものすごい大きな連続銃声。飛び起きて窓へダッシュすると、なんと、、、


3 銃で撃たれた人が倒れるところを見た

泊まっていたのはクイーズの住宅地のいたって穏やかな地区。窓から外を覗くと、歩道にいた唯一の人間がパタンと倒れるところだった。一緒にいた友人の一人がすぐに警察に電話を掛けたが、オペレーターに説明し始めるとすぐパトカーのサイレン音がいくつも近づいてきた。後で聞いたところによると、撃たれた人はこの地区に住む人ではない上、完全のこの人だけを狙った犯行だったそうで、一般住民としては少し安心。この人の命が助かったという情報もほっとできた理由だ。でも、犯人は捕まらず仕舞い。


銃はテレビや映画でおなじみでもう飽き飽きしている程。でも、実際には音を聞くだけで日本から来た私などは縮み上がる。

ナイジェリア出身の友人とそんな話をしたことがあるが、彼らは銃の危険には慣れているという。慣れているといってももちろん必ず助かる術を身につけているわけではなく、銃を目にしたり銃声を聞いたりそれから逃げようとすることに慣れているということ。また、ニューヨーク大学の社会学の授業に参加させてもらったことがあるが、全米各地から集まったクラスメートの中にはテキサスやバーモンドなど銃規制の緩い州出身の学生がいて、実家には護身用銃があると言っていた。

アメリカにいたら銃撃戦に巻き込まれる可能性が高い、というわけではもちろんないが、銃にお目にかかる機会が多いというのは、日本にいたらあまり経験しないことだ。そして、それによって世界の警察とも言われるアメリカに住むということはどういうことかを考えさせられる、特に今日この頃。

Saturday, November 21, 2015

ドローンの使用 アメリカの場合

小型無人機ドローンの使用については、日本では、「ドローン規制法」が12月10日から施行され、ある一定重量以上のドローンの飛行禁止空域で飛行を希望する場合は、申請をして審査を受けなければならないようですが、アメリカでは、規制内容の発表はまだですが、まず所有者の登録が義務づけられることになりそうです。

まず最初に登録を義務づける理由は、それによって所有者が連邦航空局に監視されているという意識を高め、規制に沿った利用をすることを期待しているからとのことです。

こちらに住んでいると日々感じることですが、アメリカという国は世界最大の国でありその立場上リスクを取った政治や世界的活動を行っているので、安全対策は半端ではありません。現在のアメリカらしい進め方だなと思いました。

登録の詳細は11月20日までに発表されることになっていましたが発表されず、代わりに以下のような主旨のお知らせメッセージが連邦航空局のホームページに掲載されました。

  小型無人機ドローンの登録は、オンラインショッピングに似た極めて簡単な
  システムになる予定です。従って、登録作業に登録代行会社の援助が必要に
  なるようなことはないと予想します。

なんと、まだ登録手順の発表も行われていないのに、登録代行を行うとうたう企業があったようです。さすがアメリカと言わざる得ない。日本に比べてパイが大きく競争は激しいのでビジネスパーソンとして先手を撃つのは重要ですね。

ところで、ドローン熱を見事にいじるストーリーが秀逸だったサウスパーク第18シーズン第5話「マジックブッシュ」、現在は日本で視聴できる手段がないのみたいなのですが、オススメです。


Thursday, November 19, 2015

インディーズ映画界が元気な国ーフィンランド

世界中のインディーズ映画界が沈んでいる中、フィンランドのインディー界が健闘しているという記事があったので紹介します。

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国からの援助に頼らないフィンランドのインディ映画界は、独自のストーリーテリング、ジャンル映画(アクション、サスペンス、ホラーなど)の面白さ、ニッチなフィクションやドキュメンタリーの増加に特徴があり、具体的には、フィルムノアール、詩的な小説のようなもの、SFものなどさまざまなタイプの海外映画から影響が見られる。

先日ヘルシンキで開催されたLove and Anarchy映画祭のフィンランドインディー映画プログラムに登場した映画のラインナップから以下のことが読み取れる。

1 作品が多様
ドキュメンタリー、アニメーション、短編などジャンルが多様であるだけでなく、内容も登山、スケート、フィリピンのトランスジェンダー支援運動の他、スウェーデンの映画監督とのコラボレーション作品など幅広い。中でも、恋愛関係の終焉について独特な雰囲気を持つ実験的な撮影方法を取ったコメディ「About Happiness」、ダイナミックなカメラワークで従来にドラマの撮り方に挑戦した「On Happiness」、48時間以内に作品を完成させる映画コンテスト「Uneton48」で制作されたアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「星の王子様」を元にした神秘的現実主義ラブストーリー「Night Goes Long」などが秀逸だった。他にも、ジャンル映画の作り方にこだわった「Guilt」があり、これは先日Raindance Film Festival(ロンドン)で最優秀初長編監督賞を受賞した監督の作品である。

2 興行成績への挑戦
大多数のフィンランド映画は国の支援により製作されており、インディー製作はそうスムーズにいくものではない。フィンランドでは国内製作作品が人気で、2014年の興行収入額トップ5のうち4作品がフィンランド国内製作の作品であるが、上位20作品の中でインディー製作されたものは1作品のみ。しかもこの作品は、ネパールの教育への投資資金を調達するために3人の男が小型トラックでヘルシンキからネパールまで旅するドキュメンタリーで、フィンランド初のクラウドファンディングで資金調達をした作品であるばかりでなく、興行収入はすべてネパールの教育資金として寄付されるというもの。

また、フィンランドではフィンランドらしくない作品は信用が薄く、従来の資金調達方法である国からの援助で製作された作品が好まれることが多い。フィンランドらしい作品とは、風変わりで一般社会から疎遠な登場人物がありとあらゆる手段を使って自己表現するものや、都市生活でからの逃避に関するものである。

3 アキ・カウリスマキの時代からの移行へ
国際的に最も名が通ったフィンランドの映画監督はアキ・カウリスマキであろうが、実験的で 無表情な登場人物が登場する彼の映画は、現代のフィンランド社会に向けて妥協のない批判を唱え続けるためフィンランドらしくないと相手にされず、商業的にもアート系映画界以外で成功することはめったいにない。

前日の「Guilt」を製作したMárton Jelinkó監督も同じ状況に直面しているようで、彼が作りたい大衆向けではない映画は、国内の既存の製作支援制度の中での資金調達は難しいと発言している。「Guilt」の製作資金10,000〜12,000ユーロはすべて監督の制作会社が調達したという。

だが、この作品は資金調達方法だけではなく他の面でも現在のフィンランドのインディーズ映画の典型である。それは、従来とは違うストーリーテリング手法を用いたジャンル映画で、その制作クオリティが高い点にある。

配給については、フィンランドのインディーズ映画は海外市場に岐路を見出しつつあると、フィンランドで唯一のインディーズ系映画配給をするMikka J. Norvantoは言う。彼が昨年製作したホラーコメディ「Bunny the Killer Thing」は、ヨーロッパ、北米およびオーストラリアの映画祭で上映された後、Raven Banner Entertainmentによる世界中での公開が決定し、その影響でその後も良い話が舞い込んできている。重要なことはその作品に合った観客を見つけることで、ネットフリックスやそれに似た国内プラットフォームの増加で状況ははるかに良くなっており、海外公開や海外にファンを持つこは夢ではなくなってきているとNorvantoは言う。

(元記事はこちら。長いので要約しています。敬称略で失礼しています)

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以前は、ジャンルに沿ったものを書かないとマーケットがないから売れない、と言われたものでしたが、最近は何でもありですね。上に出てくる「ホラーコメ ディ」などもすぐイメージできるようになりました。でももう既にジャンル名2つの単語の合成は使い尽くされてしまったように思います。次は3つかな。「ホラーラブコメドキュメンタリー」などがいかがでしょう、笑?

他の業界と同様ですが、インディーズ映画界もさまざまな部分で垣根が取っ払われつつあるので、それらがうまくつながる、うまく回るようになるまでの今の時期をどう過ごすかが、制作者にとっては重要ではないかと思っています。

自分の声をさらに育てながら、業界の動きに対して早すぎず遅すぎないスピードでやんちゃするのが目標です。

Monday, November 16, 2015

脚本読み合わせのチェックポイント

先日、友人の映画脚本の読み合わせに参加した。撮影前の脚本の読み合わせは、こちらでは「テーブルリード」と呼ばれていて、テーブルを囲んだ形で行われなくてもテーブルリードと言う。

テーブルリードは読む人が誰であるかや読み方、タイミングによって目的はさまざまだ。私もコールドリードと呼ばれる演技をしないでただ読むだけの読み手として参加したこともあれば、自分の脚本のデキを見極めるために俳優に読んでもらったことも、観客300人の前で出演予定の俳優が読む撮影直前の最終チェックとしてのテーブルリードに聞き手として参加したことも、はたまたマイクと録音を担当する音響スタッフとして参加したこともある。

今回は聞き手としての参加。ベトナム人の友人が書いた長編映画脚本の第1回目の読み合わせだった。第一回目であったがさすがすでに賞を2つも受賞している脚本、完成度が高くて読んでる俳優の読み方もだんだんコールドリードじゃなくなり、私たち聞き手もすっかり映画の世界に飲み込まれた。最後のト書きが読み終えられると拍手喝采!この脚本を書き監督もすることになっている友人は感動して泣いていた(自分の書いた脚本に感動したみたい、笑)。

しかもこの作品は、戦前のベトナムが舞台のベトナム語作品として制作される。今回のリーディングは、セリフを英語に訳してニューヨーク在住のアメリカ、アジア、中米出身俳優で行われた。文化と時代と国籍を越えて良い作品になる可能性が高いことが証明された!

テーブルリードは多くのことを気づかせてくれるとても役立つ機会。その目的や自分の役割によってチェックポイントは変わってきますが、今回気をつけて聞いていたことは以下の通り。

1 セリフが自然か
2 各登場人物が明確にイメージできるか
3 全体の流れやテンポが良いか
4 映像作品として十分に視覚的か
5 読み終わった後に心が揺さぶられているか

聞き手としての仕事は感想を述べて何か気づいた点を指摘することだけど、この作品は上の5つのポイントを軽々とクリアしていて褒めるしかなかった。たくさん刺激をもらって勉強にもなったテーブルリードだった。




Saturday, November 14, 2015

日本のインディーズ映画界に希望あり

アメリカのインディペンデント・ムービーに関するニュースサイトIndiewireに、このようなタイトルの記事が掲載されたので紹介したいと思います。正式には「黒澤後、日本のインディペンデント・ムービー界の将来に希望がある理由(After Kurosawa: Why the Japanese Independent Film Industry is Hopeful For the Future)」。

長いので要約すると、以下のようになります。敬称略させていただきます。

ーーー

黒澤明、小津安二郎、宮崎駿の伝説的な仕事は、日本の映画人だけでなく、マーティン・スコセッシやクエンティン・タランティーノ、ピクサー映画にまで明確な影響を与えた。しかし、そのような影響は、現在の日本映画界には見られないどころか再生される兆しもないことが、先週開催された東京国際映画祭(TIFF)に示された。

コンペティション部門で上映された11作品のうち日本制作の作品は3本のみ。この他には機動戦士ガンダム映画「ガンダムとその世界」と日本のホラー映画「日本のいちばん怖い夜」が特集上映されたという状況だ。

また、現在の日本の映画市場は国内作品が大部分を占めており、2000年に31.8%であったそのシェアは2014年には58%に上がっている。

しかしより深く考察すると、かつては有していた映画を芸術表現の真の形式および愛国心の源泉と捉える能力の欠如に幻滅していしまった中にも、わずかながらの楽観的進歩が垣間みられる。

現在日本のインディ映画界に見られる状況は、日本に限られたことではなく、端的に言えば、経済状況による制作、マーケティング、発表の場への妨害だ。脚本・監督の安藤桃子は、以前は商業作品とインディ作品への国のサポートはもっとバランスの取れたものだったが最近はインディ作品へのサポートが完全になくなってしまったと嘆く。また、学校教育レベルから映画制作への情熱を育てるのは非常に重要と、日本の文部科学省による文系学部軽視ととれる発言にも懸念を示した。フランスから多大な影響を得た日本人画家を描いた映画発表した監督・小栗康平は、映画における海外との共同制作の道を築いて来なかったのは日本政府の大きなミスであると言う。

さらに、最大のフラストレーションは、大手製作会社がシネマコンプレックスで興行的に成功する作品しか制作しないことである。そのためアニメやマンガ本の映画化が多くなり興行収入全体の70〜80%を占める。そしてそのアニメさえ簡単ではない状況で、第二次世界大戦敗戦に触れるコミック「百日紅」の映画化には大型投資元が二の足を踏んだとTIFFのJapna Nowセクションのプログラマー安藤鉱平は言う。ほとんどセリフのないモノクロ映画「七日」を監督した渡辺鉱文は、「国内でよく知られた俳優がインディ作品にも出演し同じファン層だけを刺激している。これは映画制作の純粋な姿がますます希少になるだけでなく、海外から注目される機会を減らしている」と指摘する。

しかし、日本のインディ界にも希望はある。TIFFのJapan Nowセクションは、日本の今後を背負う新しいタイプの作品を集めたプログラムで、昨年以前に上映された武正晴監督の「百円の恋」や是枝裕和監督の「そして父になる」は海外の映画祭で受賞を果たしている。プログラマーの安藤鉱平は、新しいタイプの小規模作品の潜在能力を示す機会になればと話す。

TIFFのJapan Nowや日本映画スプラッシュセクションで上映された作品が、今後の日本インディ映画界を暗示するものであるなら、思い切った制作をするであろう有望なフィルムメーカーがたくさんいる。例えば、自身の祖母を世話した経験を元した映画「0.5mm」を監督した安藤桃子は「私自身の中の要素、国籍や家族、性別を深く見つめることでしか、自分のスタイルを作り出し自分自身と言える作品を作り始めることはできないと分かっている」と言う。前述の「七日」を制作した渡辺鉱文は「自分のやりたい方法でこの映画を作ることを決定し、それにより得られた自由を使う制作方法が私のやり方です」と。

ーーー

日本の映画界について、特に目新しい指摘はないように思いましたが、海外でこのように報道されていることは皆さんにお知らせする価値ありと思いご紹介しました。日本の映画界の悩みは世界のほとんどの国の映画界の悩みと同じです。アメリカ映画界も大変苦しんでいますが、独自の歩みをしています。また別の機会にご紹介します。



Wednesday, November 11, 2015

AIF FEST上映作品に使われたカメラベスト4

アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)は、映画芸術の遺産を保護および発展させることを目的として作られた機関で、教育カテゴリーの映画プログラムはとても有名。著名な映画監督を何人も輩出しています。

このAFIが毎年行っている映画祭AFI FESTの今年の出品作品の撮影に使われたカメラについての記事があったのでこちらで紹介します。

1位 Arri Alexa
2位 Red EPIC、Blackmagic Pocket Cinema Camera、キャノン5D Mark IIの3つ
特記メモ 16mmとSuper 35mmが意外と多かった。

16mmとSuper 35mmが意外と多かったということですが、16mmはともかく、Super 35mmが多いというのは他の映画祭ではあまり聞きません。そろそろフィルムじゃないとイヤだという人が予算を顧みずワガママするケースが多くなっているのかもしれません。アメリカではフィルムがデジタルに追いやられることについての議論が後を立ちません。有名監督の中でもフィルム擁護派とデジタル派、はたまたこの議論に参加したくない派がはっきり別れてきました。これについてはまた別の機会に書きますね。

アメリカにいる私にとってはSuper 35mm以外は全く驚くところのない結果でした。AFI FESTは、 受賞するとアカデミー賞にノミネートされる資格が得られる高いレベルのフェスティバルであることを考えれば予想通りの結果だと思います。

日本ではどうなんでしょう?日本の現状に詳しいかたいらっしゃったらリポートお願いします!



Monday, November 9, 2015

脚本が却下される理由ベスト10

アメリカには、脚本に関係する職業がたくさんあります。

例えば、脚本コンサルタント、ストーリーアナリスト、ストーリーコーチなど。 また、脚本家ではなく「ライター」というカテゴリーの中にも、ストーリー担当、登場人物担当、舞台設定担当など細かい肩書きが用意されています。

私が尊敬するストーリーコーチ兼脚本コンサルタントのCorey Mandell氏が、「脚本が却下される理由ベスト10」を挙げているのですが、なかなか鋭いのでここで紹介します。

1. シーンに意味深い葛藤がない。
2. ストーリーの展開が指南書に則ったルールに従い過ぎている。
3. 主人公が典型的、その他の登場人物も月並み。
4. 悪役が漫画っぽい、悪のための悪。
5. 登場人物に関する論理があやふや。(登場人物の行動や動機が明確でないか信じがたい)
6. 女性の登場人物の描写が不十分。
7. ストーリーの内容が薄い。(20ページ分を100ページに引き延ばしてある)
8. 葛藤が不合理かつ一時的。(葛藤が生まれてもすぐに解決され影響を受けることなくドラマは続く)
9. ドラマがパターン化し繰り返されている。
10. ストーリーが始まるのが遅い。

6は、アメリカの脚本家は圧倒的に男性が多いから。プロの脚本家と言えど自分と同性でない登場人物を書くのは苦手な人が多いようだ。「女性の気持ち分かります!」というキャッチフレーズでアピールしようかなぁと真剣に考えている今日この頃。

日本ではこのようなリストを目にしたことはないように思う。もしどなたかリストを作られり持っておられる方がいらっしゃたら是非送ってください!
 
 



 

Sunday, August 16, 2015

ロカウェイビーチ

今日は、ニューヨークの都心からコニーアイランドの次に近いロカウェイビーチに行ってきました。

ロカウェイビーチは、3年前ハリケーン・サンディが来たとき壊滅した町。神戸淡路大震災を経験した私は、その爪痕を追わずにはいられない。ほとんどの住宅は改築され人が住んでいるようだったけど、私が経験した大震災と同様、素早く復旧しないといけなかったと見え、見た目をあまり考慮されていない丈夫が取り柄の素材を使った、似た作りの家が目についたよ。改修もされず、取り壊しもされていない建物も。

押し寄せた波の高さを示すものや、波が迫ったときにどう逃げたらいいのかを指示する標識もあった。いくつもの地震を経験した日本がだぶる。ロカウェイビーチは、周りを海に囲まれた町。またハリケーンが来ることはあるだろうなあ。

ところで、ビーチはすばらしかった!私たちは、午前9時前に到着。その時は人もまばらで、うわーーなんて静かなビーチなのぉ、しかも独り占め!と思ったのは束の間のことで、あっと言う間にいっぱいにはなったけど、それでも、日本の人気ビーチを考えれば比べものにならない余裕の人口密度だった。

このビーチは、ビーチパラソルやチェアは持参しなければならないので、私たちも前日にパラソルを購入し持ち込んだ。飲食物をビーチで売るのは禁止されているので、持参か買いに行く。買いに行くといってもワンブロック先のデリに行くだけだけど、そんな単純なことで、自然なビーチに行ってきたような気がした。






Saturday, August 15, 2015

全長82mウォータースライダー

全長82mのウォータースライダーがダウンタウンの道の真ん中に出没!滑ってきました!気分爽快だったさー!



これは、今年の夏3日だけセットされたスライダーで、壮絶な競争だったチケット争奪戦を勝ち抜いた人だけが滑れたもの。どのくらい壮絶だったかというと、発売時間の1時間以上前に専用ウェブサイトへ行くと、すでに5000人くらい並んでいて、とは言ってもウェブサイトなのでブラウザーが自動察知し勝手に受付してくれるもの。しかも受付順番はランダムだから、私が受付したときには既に5000人受付済みだったけど、私の順番は5001番というわけではなく、それは登録が開始されてみないと分からないというシステムになっていた。

私の受付番号は4327番で、順番が回ってくるまでに1時間以上掛かるだろう知らされていたけど、結局、順番は回ってこなかった。ラッキーにも友人の受付が145番だったので、そっちでチケットをゲット!

この写真の一番高いところが出発地点で、ここに着くと前から3人一組でどんどん滑っていく。私や私の前後の人はたまたまみんな2人連れで、自分の友人と一緒に滑りたがった。そのとき係員の人はこう言った。「ここはマンハッタン。わがまま言わないで、前からどんどん滑ってくれよー、人も多いし時間もないんだぜ」。

私たちニューヨーカーはこれを言われるとすぐに従ってしまう。「ここはマンハッタン」というセリフに弱いんだなあ。

Wednesday, August 12, 2015

長編の企画書できました

ここ一ヶ月ほどかけてゆっくり仕上げた長編の企画書が完成。よかったー、なんとか間にあった。

Saturday, August 8, 2015

ショートの企画書アップ!

1週間前から書き始めたショートフィルムの企画書完成!なんとか期限に間に合って提出完了。

書く作業を始めたのは1週間前だけど、使った妄想は過去5年前くらいのものも含まれることになった。ちょっとアイディア詰め込み過ぎたかも。。ショートはピタッとフィニッシュにいつも苦労する。。

Wednesday, July 29, 2015

子どもの発音

今日は海で、友だちの子どもとヤドカリのキャッチ&リリースをして遊んだ。この子たちは11歳と6歳なんだけど、この6歳の子の英語の発音が完璧!

彼女は小学校では落ちこぼれー、さんすうできないー、かんじもすきじゃないー、ずこうとおんがくだーいすき、という子なんだけど、英語の発音はバツグン!なぜかというと、通っていた幼稚園でフォニックスを使った英語レッスンがあったからなんだって。

何かの本で読んだんだけど、外国語の発音をネイティブ並みにできるようになるには、思春期までに発音を脳と耳に埋め込まないといけないらしい。 思春期以降に勉強するテーンネイジャーやオトナは、「発音がナイティブ並みになりたい!」などという幻想はさっさと捨てて、他の面で勝負できるよう努力するべし、とその本には書かれていた。

はい、中年留学した私はそうしています。。

Sunday, July 5, 2015

矢印指示 アメリカvs日本

今年は日本に帰ることが多いんだけど、帰るたびに気になるのが、矢印「→」。
駅や空港、町中の人が多い場所で、歩く人に右側または左側通行を指示するアレだ。

不思議なことにずっとそこに住んでると全く気にならないけど、普段アメリカに住んでる身には、縛られてる感がしてイライラする。というのも、1つの階段だけ、1つの通路だけなら気にならないどころか、「さすが日本、前から歩いてくる人とぶつからなくてスーイスイ」と思うんだけど、ときどき矢印に従って歩いていると、電車を降りて、改札を出て、その先の階段や通路を通り抜けて、駅の建物から完全に外に出るまで、矢印で指示されているところが結構ある。

ちょっとやり過ぎのところもあるんじゃないだろうか。。それともやっぱりこれは、自由の国、またはおおらかな国アメリカに住んでいるから、アメリカボケしてるということなんだろうか?

Saturday, June 6, 2015

A Pigeon Sat on a Branch

待ちに待ったロイ・アンダーソン監督の新作、すでにリリースされている2作を締めくくる最終章作品となるA Pigeon Sat on a Branchを見にいった。

いつもながらの、もう笑うしかない人間の悲しさ、バカさ、情けなさ、にズーンと浸って笑った。もう誰にも真似できなさ過ぎて言葉を失う。

映画館に入ってすぐのところで、この映画を見終わったお客さんとすれ違った。すれ違いざまに彼らはささやき声でこう言った。「Don't go see Pigeon movie.(ハト映画は見ないい方がいいよ」。私は笑ったけど、ロイ・アンダーソンを知らずに私に引っ張ってこられた友人はぎょぎょっとなっていた。とことんアートフィルムなので仕方ないけどさ。

翌日も仕事場で出会った友だちにこの映画を見たの話をしたら、「あー知ってる、ハト映画ね」と言われた。ニューヨークでは「ハト映画」で通っている様子だ。

では邦題はと言うと、、、「さよなら、人類」だって。えーそれはあんまりじゃないだろうか、せめて、「ハト」という単語を残して欲しかった。その点では、ニューヨークの方がアートに理解があるって当然か。

ところで今回は、マグノリアピクチャーズの配給で世界に先駆けアメリカでリリースをするということで、こっちでプロモーションをかなりやっている。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督とダレン・アルノフスキー監督の名前をpresented byとして出しているのも、その戦略の一つとしか考えられない。別にいいけど。



Wednesday, May 20, 2015

ニューヨークテレビフェスティバル パネルディスカッション

今日はニューヨークテレビフェスティバルのパネルディスカッションに参加。参加したと言っても、パネルに参加したわけじゃなく、観客としての参加。

しかし、全くもって何も学ぶことはなかった。目新しいことがゼロだった。なんてこった。最近自分が書いたコメディがドラマ化されることになった作家・脚本家を中心としたディスカッションだったんだけど、びっくりするほど普通のディベロップメント過程を説明しただけだった。がっかり。

今回のイベントは、ニューヨークテレビフェスティバルというフェスティバル主催のイベント。このフェスティバルは、一般の人からテレビ番組の企画や脚本を募って局へ紹介し契約までもっていってくれるもの。こういうのがこちらではたくさんある。

2007年に渡米したときには、テレビ局の人じゃない人が番組を提案できるということに驚き感激した。日本ではテレビ番組はテレビ局の人が作るもの(制作会社を含め)ということ以外にないもんね。

Monday, May 18, 2015

サンダンス・インスティトュート リーディング

今日は、サンダンス・インスティトュートでディベロップされた脚本のリーディングに参加。

脚本の完成度は高く映像がはっきりと浮かんでくる。役者も出演が決定している役者だったので、気合いバッチリだ。リーディング時間は2時間ちょうど。実際に編集後の作品の長さとほぼ同じでテンポが正しいことがわかる。

リーディングの後、脚本・監督のオリヴィエ を何とか捕まえて、サンダンスでの脚本と演出ディベロップメントの様子と、脚本の中で気になったことを質問。妊娠中の大きなお腹を抱えながら答えてくれた。

オリヴィエはサンダンス・脚本プログラムのメンバーであるだけでなく、Film Fataleという数あるニューヨークに所在する女性フィルムメーカー組織のメンバーなので、その2つの団体関係者がたくさん参加していた。私はどっちのメンバーでもないけど、何とか会話に参加しようと、出された大きなクッキーを片手にちょこまか動き回っていた。しかし、こういうラフなパーティでいつも困るのは身長の低さ。私の頭のひとつふたつ上で繰り広げられている会話に参加するのは至難の業だ。近くでうなずいているだけではなかなか気づいてもらえない。


Sunday, May 17, 2015

映画テレビの未来、コンフェレンス

今日は、「映画・テレビの未来」、と何ともデカいタイトルがついたコンフェレンスに参加。女性を含む映画プロデューサーの他に、Vimeo、Funny or Die、Viceという今トップを走るウェブプラットフォームのコンテンツ制作者やプログラマーのパネルディスカッションだ。

みんな頭が、ものすごく柔らかい、新しいものを作るという空気に満ちあふれていた。このウェブ時代、長さやフォーマット、カテゴリーや種類、などというものはないに等しく、どんなものでも出す場があり、そこには視聴者がいる。こういう市場では、以前はマイナーコンテンツと言われていたものも、確実にそのコンテンツに合った視聴者に届くので、もうマイナーという考え方は古い、というようなことをいろいろな角度から掘り下げていた。そして最後は、どこな場でも言われることだが、作り続けること、それを発表し続けること、それしかない、ということ。分かってるってば。


 

Wednesday, April 22, 2015

路上でヘイ、ベイビー!

日本と違ってこちらでは、路上で知らない人がしゃべりかけてくることが多い。

この前、ジムに向かって歩いていたら、後ろから、「ヘイ、ベイビー」と声掛けられた。よくあることなので別に驚いたわけではなかったけれど、どんな人か見てみたくなって振り返ったら、小学生だった。

通りがかりの女子に声掛ける練習をしてた様子。さすがにがっかりしたけど、日本での経験よりはマシだと思う。日本では、電車で塾帰りの小学生に子たちに、「ちっちゃいオトナっ」と言われたことがある。

Thursday, March 19, 2015

マルチ差別受けたように思う。

この前一人でレストランで食事をしていたとき、差別を受けた。しかもマルチ!、、だと思う。

一人のときは手軽に食事を済ませがちなんだけど、 この日は無性にメキシコ料理が食べたくなって、近くにあったメキシカンレストランへ入った。

そこはユダヤ教の人が多く住んでいる場所で、お客さんは白人ばかり。金曜日のディナータイムで、私が入った直後からテーブル待ちの列ができ始めるような込み具体。付近では人気のお店のようだ。

とってもおいしくボリューム満点のチキンモレをいただき、食べ切れなかったのでいつものように残った分をお持ち帰りにしてもらうよう頼んだところ、いつもと違う反応が返ってきた。私が頼んだ相手は、料理の出し下げと水を注ぎ足すのが担当のメキシコ系男性。

彼は、「箱持ってくるよ」と言って消え、すぐさま「箱」を持ってきたかと思うと、テーブルの上へ置いてとっとと立ち去ってしまった。彼は他のテーブルのお客さんには、残った料理を一旦キッチンに持ち帰り、パックしたものをお客さんに渡している。どうして私だけ?

とりあえずその箱に料理を詰めて、私は聞いた。文句を言いたいというよりは本当に理由を知りたかったから。大音量の音楽とおしゃべり声のせいで大声を出さなければならなかった。「ちょっと聞きたいんだけど、どうして私の料理は詰めてくれないの?」

彼は何も言わずに肩をすくめた。これ英語ではshrugと言っていろんな意味に使われるしぐさなんだけど、この場合は「別に」みたいな感じだ。私が微かに期待していた返事、「モレは箱に詰めると、ライスと豆とトルティーヤとチキンとソースが混ざってしまってクレームが多いから、お客様自身で詰めてもらってるんだ」とか「店が込み合っているので、一人のお客さんには自分で詰めてもらってるんだ」ではなかった。

店の入口で客を出迎える店長みたいな人が、心配そうにこちらを見ている。周りの客もチラチラ見てる。彼に正当な理由がないことが分かった私は店を出た。店長は、私が店を出たらすぐ私が払ったチップの額を確認していた。

現場での雰囲気や対応から考えられる理由はこんな感じかな。
1、私が店で唯一のアジア人客だった
2、一人で言いやすかった
3、女だったから
4、アグリーだったから(普段からプリティではないけど、この日は目の調子が悪くて超ド近眼メガネを掛けていて、自他ともに認めるアグリーベティだった)

はっきり言われた訳じゃないので絶対とは言えない。でもこんな風に私は感じた。
これは完全に彼自身の問題だし、私はちょっと悲しい気持ちになっただけだ。黒人の人のように命を奪われるわけではない。オバマ大統領が言うように、「行進は(セルマがアラバマで行った黒人差別を訴えるための)まだ終わっていない」。




Tuesday, February 10, 2015

中年留学の悪いところ

前回のブログ内容のようないきさつで、中年留学をした私です。
いいことがたくさんありましたが、悪いことはどうだったでしょう?

・社会人経験をしてるので、学校や授業内容のアラが目につきやすい。
・自分のお金で来てるので、それが無駄になるようなことがあるとイライラしてしまう。
・ビザの関係で働けないので、貯金額とにらめっこしながら貧乏生活を余儀なくされる場合がある。
・暗記力が落ちてることを思い知らされる。
・脳に今までと違う活動をさせようとすると、嫌がってるのが手に取るようにわかり、いちいち時間がかかる。
・体力がクラスメイトについていけないときがある。
・体調管理をしていても、体のあちこちに支障が出てくる。
・家族が高齢なので、家庭の問題や事情を優先させないといけない場合が多くなる。

まあどれも一般的中年問題ではあります。ただ環境が海外であるために、
・第2言語での戦いになる。
・日本での経験を経験として生かせない場合がある。
・健康保険が高くて制限された保険にしか加入できない、または全く加入できないために(アメリカの場合)、完全な治療を受けられない場合がある。
・家族の元へ行くのに時間が掛かる。
ということが伴います。

私の場合は、ニューヨークに住んだこともあり、映画学校に通ったこともあったので、ほとんどのことは覚悟して行ったんだけど、思ったほど経験を生かすことができないことと、脳の働きが悪いこと、この2点には苦しめられています!

経験を生かすことができないのは、以前とやってることが違う、土地や環境が違うことが、中年留学の辛い点だけど、これに「時期が違う」というのが加わるのでなかなか手強い。技術の進化スピードが速いので、手段や考え方がどんどん変わっていく。特に私がやってる映像制作は、デジタルワールドなのでね、ブツブツ。

脳の働きが悪いのは本当に腹が立つ。働きが悪いというより、頭が悪い、というのが正解かもしれないけど、それを言ったらオシマイなので、言わないよー。記憶力はまあ仕方ないとして放ったらかしだけど、柔軟な発想を生み出す柔らかい脳、私の仕事にはこれが大事。毎晩シャワーから出たら、頭から脳を取り出してマッサージしたいくらい。

中年留学を考えている方、何か質問あったら是非どうぞ!

おっと最後に、これだけ悪いことがあっても留学してよかったか、ですが、今現在は、よかったと思う、とお答えしておきます。人生全体で考えたら、想像できなかった経験を山ほどしているので、アドベンチャラスな私としては、こちらで正解だったと思います。でも最終的にどこまでミジメな姿に落ちぶれるかわからない。とことん落ちたときに本当の答えが分かりまする。

Friday, February 6, 2015

中年留学の良いところ

今日は中年留学について書こうと思います。

私は、日本である程度ガッツリ仕事をしてからこちらに来ました。
中年になるまで一度も留学しなかったわけではなく、2年程度の短期留学はしてたんだけど、ビザやお金、キャリアの面でやっていける自信がなくて帰国してました。

日本ではコンサートプロモーターで働いてたのですが、仕事における自分の将来像が見えるに従って、年齢を重ねるに従って、このまま死んだら後悔しそうだ!と思い始めました。
なぜかというと、2年間留学したときにニューヨークで出会った映画制作をもっとやりたいという気持ちがずっと心の片隅にあったからです。

長らく悩み、決断したものの会社を説得するのにも時間が掛かり、家庭の事情を考慮してタイミングを計り、友人知人の唖然とする顔を押しのけ、やっと渡米したときには人生半ばを過ぎていました、トホ。

でも大好きな町にやってきてワクワクしながら学生を始めました。
中年留学の良いところはたくさんあります。

例えばこんなこと。

・自分のお金で来てるので、好きなことに好きなように使える。
・目的ははっきりしてるから、行動がブレにくい。
・ある程度先が読めているから慌てることが少ない。
・社会経験があるから落ち着いた判断ができ易い。
・若い友人や彼氏(私はシングルだったので)ができる!
・若い世代の文化を知れる、体験できる。
・初心に戻れる!
・いい年なんだからバカなことできない、というバリアを外せる!
・脳がまだまだ進化することを体感できる。

特に、初心に戻れることはとても気持ちよかった!
これは、ここまで環境を変えなくてもできればいいんでしょうが、私は日本にいるときはなかなかできなかった。だからとても嬉しかったよ〜。

今現在もまだ留学の続きでアクセクしてるので、あっけらかんと、「なっつかしいなぁ〜!」なーんて言えないけど、こうやって書き出してみると、笑えるエピソードをいっぱい思い出した。周りに助けてもらって中年留学させていただいて感謝です。

次回は恐怖の「中年留学の良くないところ」をお届けします。



Monday, February 2, 2015

NFL スーパーボール ガカモーレとコマーシャルとハーフタイムショー

今年はスーパーボールサンデーを、アメリカ人宅でアメリカ人に埋れて過ごした。
スーパーボールの試合は午後6時半くらいに開始だけど、スーパーボールサンデーは朝から始まる。

まずは買い出し。スーパーボールならではのアメリカンメニューの食材や飲み物をどっさり買い込む。うちの近所では、スーパーやデリが店前にテーブルを出してスーパーボール用食材を売っていた、ついでに子ども用おもちゃも。

次にその食材を使って調理。とは言ってもとても簡単メニュー。ビールをクイクイっとやりながら、アボガドを開いていく。私はビールがつらい人向けのマルガリータを担当。何度も味見しながら作ったので、完成時にはすでにちょっとふわふわふわ。お腹がすいた人用のホットドッグとサラダ、ベークドポテトもできあがる。

テーブルの上には、大量のガカモーレ(アボガドディップ) とチップスが山盛り、いろんな種類のカナッペもダンダンダーンと大胆に置かれていく。この大胆さが気持ちいい。試合が始まる直前にはピザも到着。これがアメリカ人のスーパーボールメニュー!

今年のスーパーボールはとてもいい試合だった。終盤「うそー!」というプレイが続出したおかげで大盛り上がり。私も、そのうちの1つのスーパーキャッチを実演(マルガリータがおいしかったので)、これが大ウケしたので5回ほどやった、らしい。

ところでスーパーボールと言えば、そのテレビ番組内で流れるコマーシャルが話題だ。大手企業がこぞってスーパーボール用コマーシャルを作って勝負する。日系企業ではトヨタと日産、トヨタはトヨタ全体とレクサスの2本を投入していた。コマーシャルのタイプは、全部チェックすれば、爆笑もの、皮肉もの、マジメもの、金掛かってるもの、うっそーもの、と色々あるが、今日話したいのは、マッチョ向けお涙もの。

例えばこれ(日本でも見れるかな?)




フットボールファン向けに、カッコいいもの、ダンディなもの、強いもの、はちゃめちゃもの、などではなく、動物女子どもを使った感動ものが最近増えている。私は見てるとかなりイライラするんだけど、一般的には大人気で、バドワイザーのコマーシャルは、昨年「今年のスーパーボールベストコマーシャル」を総ナメしたもののの続編。今年も上位に食い込んでいた。なんてことだ。でもこのマッチョ向けお涙ものっていうカテゴリーは、考え方としては面白いと思った。フットボールの試合中に見るものとしては意外性があるし、ターゲットから考えても逆をいっている。

今年のコマーシャルで一番よかったのはこれです!すばらしい。残念ながら私が作ったんじゃないけどね。



それからハーフタイムショー。
ケイティ・ペリーよく頑張ったと思った。激しいしがらみの中、彼女のカラーをあそこまで残せたことはすごいし、なんと言っても堂々としてた。見習いたい、笑。











Sunday, January 25, 2015

お久しぶりです! これまでの経緯

4年ちょっとぶりにブログを再開します!

これまでの経緯ちょこっとまとめ。

7年半前、2007年の夏にアメリカへ来ました。映像作家になるべく映画学校へ通いながら、インターンをやったり撮影現場で修行。

2010年と2011年前半は、ビザと家庭の事情でほとんど日本にいました。この間もカメラと編集の経験を積みながら脚本を書く日々。東日本大震災が発生したときに日本にいたことは、1995年の阪神・淡路大震災を経験した私にとって多くのことを考えるきっかけになった。

2011年9月、周りの皆さんの協力のおかげで再び渡米、それ以来ここニューヨークで、何とか生き延びています。

2007年に渡米するとき中年単身留学ということで、友人や先輩の皆さんにとってもご心配をお掛けしたのですが(アホか、成功するわけないやろ、やめとけ、と愛のムチをいただいた)、結局こちらへ。
あれから実質的なアメリカ滞在期間は5年半。あのときいただいた言葉をひしひし実感しながら、いまだに大海原をバタ足でもがいています。

どうか皆さん、涙と笑いの準備をしてこのブログを訪れてください!