Tuesday, January 12, 2016

ドキュメンタリーもドラマ(HBO「Project Greenlight」)

アメリカのケーブルテレビ局HBOの「Project Greenlight」は、ベン・アフレックとマット・デイモンがエグゼクティブプロデューサーを務めるドキュメンタリー番組。
アメリカの映画制作の現場を知りたい人はもちろん、ドラマ好きにもオススメ!

この番組は、一般公募で選ばれた新人映画監督に長編映画を制作するチャンスを与えて、その過程を追いかけるというもの。2001〜2005年に放送された 後一旦なくなっていたけど、2015年にカンバックを果たしました。2001〜2005年のは観ていないのですが、2015年秋に放送されたシーズン4を観たので、それについて書きます。

シーズン4の見所は、新人監督のジェイソンのアーティストとしての頑固さと現場を円滑に進めようとするプロデューサー エフィとの戦い。現場経験のある私はジェーソンの頑さにイライラしっぱなしだったけど、見習うべきところもあるなとも思った。
まあ、それはいいんだけど、それより何より、さすがドラマ作りの最先端を行くHBO様が作るドキュメンタリーだけあって、登場人物の構成とストーリーの展開がお手本のようだったのと、プロモーションに根性入ってることに関心しました。

まず登場人物とストーリーについて。

これは、いわゆるドラマ脚本の基本に忠実にのっとってました。登場人物の構成は、困難な旅に立ち向かう主人公、その旅の邪魔をする敵、その敵の背後に構えるのは、クルー、敵の上司、そのまた上の大物。主人公の味方側に立つのは共同脚本家、業界の大先輩、そして困ったときの最後の砦としてのベン・アフレックと マット・デイモン、という完璧な配陣。主人公と敵には欠点があり、それに直面しながらそれぞれの目的達成のために懸命に戦う。他の登場人物もそれぞれの目的に向かって邁進する。ストーリーは、敵との戦いの中で味方を1人ずつ失う主人公が最後に見つけるものは、、、という王道。

という風に書いてしまうと、ありきたりな内容に思えるかもしれませんが、そうではありません。構成や設定はされているけどドキュメンタリーなのでドキドキ感が倍増するんですねぇ〜。

次にプロモーションについて。

これは、第1話でのマット・デイモンの問題発言のこと。”多様性はクルーの選出においても大事だ”と主張する黒人プロデューサー エフィに、マット・デイモンは、”多様性が大事なのは俳優の選択においてだ”(クルーは誰でもいい、あるいは、クルーは白人男がやればいい、という風にもとれるような流れ)と反発。これは、ツイッター(#Damonsplaining)で大騒ぎになった。この発言、自然に出てきた言葉のようだったのでマット・デイモンには失望したけど(もし、これが演技だったらマット・デイモンを世界一の俳優と呼びます!)、それより、こんな人種差別的なセリフをオンエアカットに残すというHBOのプロモーションのやり方に恐れ入った。そして、攻撃されるのが分かっていたのに自分の問題発言を残し、後に謝罪コメントまで発表したマット・デイモンの番組エグゼクティブプロデューサーとしてのプロ根性はあっぱれです。

「Project Greenlight」は、中南米はもちろんヨーロッパとアジアの多くの国ではHBOが観れるので観れるはず。

日本では、HBOと独占契約を結んだというスターチャンネルで、そのうち観れるようになるんじゃないかな〜と思います。それまでは、ユーチューブの「Project Greenlightチャンネル」をお楽しみいただければと思います。




Wednesday, December 30, 2015

ドローンの使用 アメリカの場合(続)

アメリカでのドローンの使用について以前に書いたのですが、面白いことになってきているので続きを書きます。

以前のポストでは、アメリカでドローンを使用する人は連邦航空局に登録しないといけないこと、そして、その登録フォーマットはまだ発表されていないのに、登録を請け負う会社が出現している、ということをお伝えしました。

その後、登録フォーマットは予定通り発表され、12月21日から登録が開始されました。登録料は5ドル(たった5ドル!でも料金が発生するのがアメリカ社会!)ですが、最初の1ヶ月は無料だそうです。登録をしなかった場合の罰金は27,500から250,000ドルの間で刑事処分が伴う場合もあるとのこと。それから、趣味で使用する人はこれで登録完了だけれど、商業的に使用する人は更なる情報を登録しなければならないようで、その発表は2016年春になるそうです。

ここまではまあ決定事項のお知らせなんですが、面白いのはここから。
今回の新規定に関する連邦航空教のFAQと運輸省の発表内容に一致しない部分があるのを見つけたフォーブス誌が双方に問い合わせをしたところ、
 ー登録された内容のうち名前と住所と登録番号は一般に公開されるー
ことが明らかになったそうです。
でも、
 ー名前と住所は、プライバシー保護法によって保護されますー
と言われたそうです。

これってどういうこと?私の文章読解力に問題があるのかと思って何度も読み返してみたけどやっぱりそう書いてあるし、ネット上でも少なからず話題になっている。このドローンの登録は13歳以上なら誰でもできることになっているから、13歳の子どもの名前と住所が公開されるってことだ。ふーん、どうして趣味で飛ばす人の名前まで公開しないといけないんだろう?

ということで、この件は落ち着くまでまだ少し時間が掛かりそうに思います。今年はドローンが撮った映像、鳥の気分になれる映像をたくさん見たなぁ。早く映画で容易に使えるようになって欲しいでっす!





Tuesday, December 22, 2015

インディ・ジョーンズ ストーリー会議録(ルーカス・スピルバーグ・カスダン)

インディ・ジョーンズ レイダース/失われたアークのストーリー会議録があるなんて、最近まで知らなかった!

これは、製作総指揮・原案のジョージ・ルーカス、監督のスティーブン・スピルバーグ、脚本のローレンス・カスダンの3人によるストーリー会議の録音記録。脚本の1ページ目を書き始めるずっと前の、まだアイディア段階のものがどう進化していったかを目の当たりにできるすごい代物!

何がすごいって、3人それぞれの専門分野における能力が最高レベルで、それが合体したとき1+1+1が3でも5でも10でもなくて100になるのが見えること。

以下はこの会議録を読んでいて特にワクワクした点

1、まず最初にやったことは登場人物像を詳細まで詰めることであったこと。主人公の職業における専門分野や弱点だけでなく、服の素材や形、色、趣味やそれに関連する持ち物やその凝りようが分かる種類までをちょっとふざけすぎじゃないかと思うくらいまで面白ネタを豊富に盛り込む。一切のストーリー展開の話し合いを開始する前にこのレベルまで話し合われている。

2、物語の背景説明をどう見せるかについて、細かく設定し過ぎて後で調整ができなくて困るのではないかと懸念するくらいまで几帳面に決め込んでいたこと。地面の素材やムチの種類な形状、アクションシーンでの体の動きなどを、もちろん制作的な目線でも検討した上で決定してしまう。

3、アイディアがどんどん出て、すべてがビジュアル的であること。会話すべてが細部にわたっているし例えが具体的なのでイメージしやすい。例えば冒頭では「黒澤映画における三船敏郎みたいな」というような日本人にとっては嬉しくもある表現がされている。映画では制作過程で多くの人を巻き込み説得しなければならないので、とても重要だと思った。

いやあ、感動しました。 この会議録はこちらからご覧いただけます。





Tuesday, December 8, 2015

アメリカの映画・テレビ番組制作における税額控除

先日、メディア・サービス社主催の税額控除制度の説明会に参加してきた。

これはアメリカ各州の映像メディア(映画、テレビ、ミュージックビデオ、ウェブドラマなど、対象メディアは州により異なる)向け優遇税制を詳しく説明してくれるもの。メディア・サービス社というのは、アメリカ全土でエンタメ業界の会計や制作に関わるサービスをしている会社。

映画の制作費は多額なので、優遇税制を利用するのはほぼ必須要素。だから、アメリカででは当然多くの州で何らかの優遇税制が設けられている。その主なものは、助成金制度やロケ支援、税金免除、税金還付制度、税金移行制度などだ。

税制は、州によって設定項目や方法が違うため一概にどこが一番良いとは言えない。作品の規模や内容によってどの州が撮影にベストかは違ってくる。

とりあえず、最近の傾向と超低予算作品にとって良い州を探ってきた。内容は毎年のように変更されたり中止になったりしているので、ざっくりとしたリポートをする。

優遇税制のおかげで撮影が増えている州
 ・ルイジアナ州
 ・ジョージア州

  基本的な税控除率が高い上、利用すると更に税控除が増えるローカルサービス
  がたくさんある。例えばルイジアナ州では、州在住の脚本家や作曲家が参加
  すると控除率が上がる!これすごい。ルイジアナ州に引っ越して脚本を
  書いて、「私を雇ったら制作費浮きますよ!」と宣伝しようかと思った、
  笑。

超低予算作品に有利な州
 ・コネチカット州

  優遇税制を受ける条件が低くインディペンデント作品にやさしい。 最低制作費
  1,000万ドル(内容には条件があるが)から優遇制度がある!

優遇税制が中止されるのは、それによって州の財政がかえって苦しくなっているかビジネスの活性化につながっていないと判断された場合。ミシガン州、アラスカ州、マサチューセッツ州、そして現在多くの作品の誘致に成功しているルイジアナ州などが、今後の中止あるいは税率や控除税額に制限をつけることを発表している。ルイジアナ州は税額を無制限から1億8,000万ドルに制限するという、、調べたら今年はなんと16億ドルの赤字になりそうとのこと。

一方、カリフォルニア州、ペンシルバニア州、メイン州などは優遇制度の制限を緩めたり控除額を上げたりするようだ。

今回の説明会はアメリカのものだったのだけど、北米で一番優位な優遇制度があるのはカナダだ。カナダでは国と州の税制を合わせると、アメリカのどの州も競争にならないような高率な控除制度がある。

ということで、アメリカの優遇制度は今後も続くものの、内容はしょっちゅう変わることが予想される。特に共和党政権期間は反対勢力が力をふるう様子。


Thursday, December 3, 2015

アメリカのクラウドファンディング 新ルール

先日、アメリカの証券取引委員会(SEC)がクラウドランディングに関する新たなルールを発表した。

これまではほとんどのプロジェクトで、収益を募金者に分配するという設定はなされていなかった。これは禁止されていたわけではなく、SECの手続きが非常にややこしくお金もかかるため、それをやる人が少なかっただけだ。

でも今回、これが完全に許可されることになった。条件は以下の通り。

1. 年収または自己資産額が1,000万ドル以下の人が募金できる金額は、
2,000ドルか年収または自己資産額の5%のどちらか高い方。

2. 年収または自己資産が1,000万ドル以上の人が募金できる金額は、
年収または自己資産額の10%未満で、過去12ヶ月間の合計募金金額の上限は1,000万ドル。

3. ひとりのプロデューサーが集めることのできる金額は、
12ヶ月間に最高1億ドル。

このような数字設定になったのは、 大手映画会社スタジオがクラウンドファンディングを使って制作費を集めるのを制限する一方、インディーズ映画には制作に十分なお金が集まるようにという考慮された結果だ。これはとても大事な点で、アメリカのクラウンドファンディングではこれまでにも著名人や大手映画会社関連のプロジェクトが多額を集めて非難を受けていた。

今回発表された新ルールが適用されるのは、2016年1月29日から。
今後ますますクラウドファンディングが栄えそう〜。ラララ〜。

SECの発表はこちらで確認できます。


Tuesday, December 1, 2015

アメリカで人気のテレビ番組・映画配信サイト

アメリカでテレビ番組や映画をストリーミングサイトで見る場合、どこがよく利用されているでしょうか?

1位 Netflix (インターネット利用者の51%)
2位 Youtube (インターネット利用者の47%)
3位 Amazon (インターネット利用者の26%)
4位 Hulu (インターネット利用者の22%)
5位 HBO Go (インターネット利用者の13%)

Youtubeでは全編を見られるテレビ番組や映画は少ないことを考えると、本当に内容をしっかり見たい人が利用するサイトとしてはNetflixが圧倒的に強いということになる。
他のサイトもオリジナルコンテンツを作り巻き返しを図っているが、Netflixの勢いは留まるところを知らない。海外、特にヨーロッパでのNetflix市場は広まるばかりで、株価も今年だけでも2倍以上に伸びている。

Netfilxのコンテンツ別比較では、コメディよりドラマやアクションものがよい数字を上げているという。アメリカではコメディは激戦だ。他にたくさんのサイトがあってしのぎを削っている。またいつか紹介したいと思う。

HBO Goというのは、ケーブルネットワークのHBOが自社の番組を配信するもので、現在他ネットワークでも同様のシステムの導入を検討しているところがあるようだ。

最近は、劇場公開映画でも、劇場で公開を開始してすぐネット配信をしたり、先にネット配信を開始してから劇場公開する作品もある状態で、作品のタイプによって最善のマーケティング効果を目指してさまざまな策が取られている。

アメリカでは日本のように無料でテレビを見れないので、何を観るにしてもいくらかのお金を払うことになる。 だから視聴者はそれぞれが見たい作品をより安くより多く見られる手段を模索することになる。

映像作品はプラットフォームもコンテンツも増えているのでチャンスも多い、のは確かだけど、内容における競争は激しさを増している。

参考にした記事はこちら



Saturday, November 28, 2015

映画監督インタビューの最高峰:「ディレクターズ・チェア」

映画監督の本音、葛藤、裏話、秘けつが聞けるインタビューテレビ番組、それが、アメリカのケーブルチャンネル エル・レイ・ネットワーク(El Rey Network)「ディレクターズ・チェア(The Director's Chair」

このケーブルチャンネルは映画監督のロバート・ロドリゲスが創設したもので、「ディレクターズ・チェア」はロバート・ロドリゲスが著名な映画監督に、映画監督としての知識と経験があるからこそ尋ねることができる質問をぶつけ、通常のインタビューでは聞けない監督としての深い葛藤や本音を引き出すインタビュー番組。

シーズン1でインタビューされた映画監督は、
・ジョン・カーペンター
・クエンティン・タランティーノ
・ギレルモ・デル・トロ
・フランシス・フォード・コッポラ
・マイケル・マン
・シルベスター・スタローン
・ルイス・バルデス
・ロバート・ゼメキス
・ジョージ・ミラー

 私がこの番組を観ずにはいられない理由は以下の4つ。
・難しいショットの撮り方が分かる
・ビジネス面の難しさの詳細が聞ける
・著名な監督が新人時代をどう乗りこえたか聞ける
・情熱が映画を完成させることを再確認できる

要するに、知識と元気の両方をくれる番組です!
  
日本ではまだテレビでの放送はされてないようなのですが、すべてのエピソードをiTunesのアメリカサイトで観れます。

ロバート・ロドリゲスは、このケーブルチャンネルを基本的にはラテン系アメリカ人向けにの局としてスタートさせた。ラテン系と言っても英語を話すラテン系で、ラテン系である自身のような映画好きやフィルムメーカーを応援したい様子。

この番組の他にはシリーズもののアクションドラマやラテン系アメリカ人が制作または出演している映画などを放送している。また、人種に関わらずアマチュアフィルムメーカーの映像作品もオンエアできるよう門戸を開いていて、インディペンデントフィルムメーカーであり続けた彼の思いが存分に詰まった番組構成だ。

アジア人の私も存分に楽しんでおります、と彼に伝えたい、笑。