Saturday, November 14, 2015

日本のインディーズ映画界に希望あり

アメリカのインディペンデント・ムービーに関するニュースサイトIndiewireに、このようなタイトルの記事が掲載されたので紹介したいと思います。正式には「黒澤後、日本のインディペンデント・ムービー界の将来に希望がある理由(After Kurosawa: Why the Japanese Independent Film Industry is Hopeful For the Future)」。

長いので要約すると、以下のようになります。敬称略させていただきます。

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黒澤明、小津安二郎、宮崎駿の伝説的な仕事は、日本の映画人だけでなく、マーティン・スコセッシやクエンティン・タランティーノ、ピクサー映画にまで明確な影響を与えた。しかし、そのような影響は、現在の日本映画界には見られないどころか再生される兆しもないことが、先週開催された東京国際映画祭(TIFF)に示された。

コンペティション部門で上映された11作品のうち日本制作の作品は3本のみ。この他には機動戦士ガンダム映画「ガンダムとその世界」と日本のホラー映画「日本のいちばん怖い夜」が特集上映されたという状況だ。

また、現在の日本の映画市場は国内作品が大部分を占めており、2000年に31.8%であったそのシェアは2014年には58%に上がっている。

しかしより深く考察すると、かつては有していた映画を芸術表現の真の形式および愛国心の源泉と捉える能力の欠如に幻滅していしまった中にも、わずかながらの楽観的進歩が垣間みられる。

現在日本のインディ映画界に見られる状況は、日本に限られたことではなく、端的に言えば、経済状況による制作、マーケティング、発表の場への妨害だ。脚本・監督の安藤桃子は、以前は商業作品とインディ作品への国のサポートはもっとバランスの取れたものだったが最近はインディ作品へのサポートが完全になくなってしまったと嘆く。また、学校教育レベルから映画制作への情熱を育てるのは非常に重要と、日本の文部科学省による文系学部軽視ととれる発言にも懸念を示した。フランスから多大な影響を得た日本人画家を描いた映画発表した監督・小栗康平は、映画における海外との共同制作の道を築いて来なかったのは日本政府の大きなミスであると言う。

さらに、最大のフラストレーションは、大手製作会社がシネマコンプレックスで興行的に成功する作品しか制作しないことである。そのためアニメやマンガ本の映画化が多くなり興行収入全体の70〜80%を占める。そしてそのアニメさえ簡単ではない状況で、第二次世界大戦敗戦に触れるコミック「百日紅」の映画化には大型投資元が二の足を踏んだとTIFFのJapna Nowセクションのプログラマー安藤鉱平は言う。ほとんどセリフのないモノクロ映画「七日」を監督した渡辺鉱文は、「国内でよく知られた俳優がインディ作品にも出演し同じファン層だけを刺激している。これは映画制作の純粋な姿がますます希少になるだけでなく、海外から注目される機会を減らしている」と指摘する。

しかし、日本のインディ界にも希望はある。TIFFのJapan Nowセクションは、日本の今後を背負う新しいタイプの作品を集めたプログラムで、昨年以前に上映された武正晴監督の「百円の恋」や是枝裕和監督の「そして父になる」は海外の映画祭で受賞を果たしている。プログラマーの安藤鉱平は、新しいタイプの小規模作品の潜在能力を示す機会になればと話す。

TIFFのJapan Nowや日本映画スプラッシュセクションで上映された作品が、今後の日本インディ映画界を暗示するものであるなら、思い切った制作をするであろう有望なフィルムメーカーがたくさんいる。例えば、自身の祖母を世話した経験を元した映画「0.5mm」を監督した安藤桃子は「私自身の中の要素、国籍や家族、性別を深く見つめることでしか、自分のスタイルを作り出し自分自身と言える作品を作り始めることはできないと分かっている」と言う。前述の「七日」を制作した渡辺鉱文は「自分のやりたい方法でこの映画を作ることを決定し、それにより得られた自由を使う制作方法が私のやり方です」と。

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日本の映画界について、特に目新しい指摘はないように思いましたが、海外でこのように報道されていることは皆さんにお知らせする価値ありと思いご紹介しました。日本の映画界の悩みは世界のほとんどの国の映画界の悩みと同じです。アメリカ映画界も大変苦しんでいますが、独自の歩みをしています。また別の機会にご紹介します。



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