Monday, May 30, 2011

あやめ

94歳の祖母に、
「おばあちゃん、アイリスがほら、きれいに咲いてるわ」
と言うと、祖母はしばらく花を見つめてから言った。
「あやめ やな」

普段、使う単語が限られている祖母が、
脳の奥の方から、この単語を引っ張り出してきた。
そう、アイリスは日本語であやめ。

このまっすぐに咲く深紫の花のビジュアル情報が、
祖母の右脳を通って左脳へ届いた。
力強い記憶のさかのぼり。
祖母が生まれ育った家の庭には、あやめが咲いていたに違いない。















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Wednesday, May 25, 2011

老子の無言




















老子の無言(田口佳史 著)

曲なれば則ち全く、枉なれば則ち直し。

幹が曲がりくねっているような木は、材木として使い道がない。だから伐採されずに長生きし、年輪を重ねていく。

社会的に見て良いとされる人より、扱いにくい個性的な人、自分の生き方を貫いている人の方が余計な争いもなく愉快に長生きできる。

尺取り虫は、くねくねと身を曲げたり伸ばしたりしながら進んでいるようだが、その軌跡を見るとまっすぐだ。


ふーん、
と思ったのも束の間。
あっという間に頭の中は、尺取り虫の映像に占領された。

映像に甘やかされてるのか、脳の問題か。



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Tuesday, May 17, 2011

動的平衡




















動的平衡(福岡伸一 著)

やっと読みました。ずっと読みたかった。
そして、読んで大満足。

読み終わってからしばらくボーッと、自分の腕を見てたりしました。
動的平衡が見えるかなあとか思ったけど、見えなかった。笑

-個体は、分子のゆるい「淀み」
-生命現象とは構造ではなく効果
-生きているとは、流れとしての環境の中で、身体が変わりつつかろうじて一定の状態を保っていること=動的平衡
-生命は環境の一部、あるいは環境そのもの

表現が精密で温かい。生物への愛を感じる。

動的平衡の神秘に感動しながら、、、

”生命現象の邪魔をしないように、せめて栄養バランスよく食事をしよう。”
”エイジングケアの化粧品を使い過ぎはやめよう。”
”環境の一部、あるいはそのものとして、まわりの環境さんとうまくやっていこう。”
と思った。

まわりの環境さん、
すなわち、自然や、他の生き物、他の人間、生きてること、あした何をするか、などについて、
逆らわないで、やることをやる、みたいな。
それは、自分の中から出てくるものにね、逆らわないっていうこと。

平衡、
生命の平衡、
精神の平衡もね、保ちたいと思った。


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Thursday, May 12, 2011

ベネズエラ・テレサ・カレノ・ユースオーケストラ (The Teresa Carreño Youth Orchestr of Venezuela)



ベネズエラ・テレサ・カレノ・ユースオーケストラ (The Teresa Carreño Youth OrchestraThe of Venezuela)
指揮・グスターボ・ドゥダメル (Gustavo Dudamel)

何を今頃、、と言われるかもしれないけど、
このオケ、すごい!

まっすぐにぶつかってくる楽しい迫力!

ユースならではの躍動感とか、人数の多さ(150人くらいいそう)とか、
南米のノリノリとか、いろいろあるけど、
そんなのより、
責任、覚悟、自尊。
そういうものを感じる。

ベネズエラという政情不安定国家から、
この規模で、この高レベル。
遠い極東の国で聴くのは格別です。

発展してしまった国が忘れてしまってるもの、
自然災害を受けた国が欲しがってるもの、
両方を一度にもらった気分。

数あるビデオの中でも、これが楽しい。
団員が私服だからか、私が曲を気に入ったから?
それともやっぱり、
グスターボ・ドゥダメル (Gustavo Dudamel) の髪型の具合が気に入ったからかも!


ベネズエラ・テレサ・カレノ・ユースオーケストラ (The Teresa Carreño Youth Orchestra of Venezuela)
若者と子どものためのオーケストラと合唱団のベネズエラ国立システム「エル・システマ」の高校生オーケストラ。
現在「エル・システマ」には、30のシンフォニーオーケストラを含め、音楽教室などを含めると157のユースプログラムがあり。30万人が在籍。(ベネズエラの人口は3000万人弱!)参加者の90%は貧困地区出身者。

グスターボ・ドゥダメル (Gustavo Dudamel)
「エル・システマ」のオーケストラにてバイオリニスト/指揮者としてスタート。現在、ロス・アンジェルスフィルハーモニック交響楽団の音楽監督であり、ベネズエラ・ジュニアオーケストラの総合指導者でもある。

ホセ・アントニオ・アブラウ (Jose Antonio Abreu)
「エル・システマ」の創設者。音楽家であり、教育者、経済学者、政治家。
”音楽そのものが作り出す巨大な塊の世界が、音楽自体の中にも宿り、物質的貧困を克服する。楽器を学び始めたその瞬間から、その子はもう貧しくありません。”
彼のスピーチに、深い洞察力、行動力、そして信念をみることができます。


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Saturday, May 7, 2011

眠れなくなる宇宙のはなし






















眠れなくなる宇宙のはなし(佐藤勝彦 著)

タイトルがいい。宇宙のはなしはこうでなくっちゃ。
今も宇宙は、その95%が未解の空間、
だから、何でもありで夢を見られる。

12世紀のアクィナスの説がたまらなくかわいい。

「宇宙の中心には土と水でできた地球があり、
そのまわりには空気の層と火の層がある。
そしてその外側に星々が張りついた天球があり、
その数は8つ。太陽、月、5つの惑星、そして恒星。
その惑星や恒星の回転など細かな動きは、天使が調節している。」

えっ、天使?!!

















NASAの5月4日の発表。
「質量が存在すると、ボウリングのボールが載ったトランポリンみたいに、
時間と空間で構成される4次元の「時空」がゆがむ、
というアインシュタインの一般相対性理論の予言が、
人工衛星「GP―B」の観測で確認された。」

すごい、おめでとう!

4次元時空についてはもうすぐ証明されるかも、
と、ここ最近さんざん言われていたので、そんなに驚かないけど、
この理論が完成されたのは1216年。
長い道のりお疲れさまです。

でも一言、言わずにはいられない。

宇宙について、あんまり解明しないで〜。
人類はもう少し、
夢を見ているべきだと思うのですよ。



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Thursday, May 5, 2011

ざくろの色 (Sayat Nova / Color of Pomegranates)























ざくろの色 (Sayat Nova / Color of Pomegranates) (セルゲイ・パラジャーノフ Sargis Hovsepi Parajanyan 監督

ぶっとびました。
全シーン、象徴映像&音でつくられています。

物、人、動き、音が、スロースピードで進む中、
目と耳で捉えた画の意味が、脳の中で堀り下がります。
シーンごとの主役たち(人または物)の発する声は、
無類、否、鮮明です。
環境は、アルメニア、しかも中世。
だから、建物、小道具、生地、色、音楽から、全く目と耳を離せません。

わたしのポイントはここ。
1 象徴表現を全編貫いている!完結してる!
2 その象徴の仕方がユニークで、私には思いつかない!脳を見せて欲しい!
3 音、動き、フレーム構成で遊んでる!おもろい!

”!”を、何とか、最後の3行だけに収めました。



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Sunday, May 1, 2011

単純な脳、複雑な「私」























単純な脳、複雑な「私」(池谷裕二 著)を読みました。

脳とは、こんなところだそうです。
-自分が起こした行動に、主観的経験を使って感情をでっちあげてる。(行動が先、意志が後)
-他人を観察し、それにより幽体離脱を覚え、外から自分を眺めてやっと、自分に心があることを知った。
-物理的な痛みと心の痛みを同じところで感知する。

読んでから、しばらく考えた。
そしておおっ!納得した。
その理由は、こんな風に感じることがあるから。
「説明できないけど、多分それで合ってる」
「人のことはよくわかってるのに、自分のこととなるとどうも、、、」
「つらいとき、本当に胸が痛い」


脳のノイズ(ゆらぎ)とは、こんなものだそうです。
-情報の収集と利用を入れ替えるタイミングを生み出す。
(入ってきた情報に従って動いたり、いややっぱり他のを探そう、と動きを変えること)
-微弱な信号を強めて全体がバランスよく見られるようにする。
(例外中の例外だけど大事なことかもしれないから、と示す)

働きもののアリの中に、いっぴきだけいる怠け者のアリのようなもののことだそうです。怠け者のアリは、ゆえに近道を探し当てたりする。
(ゴルフのパットが百発百中じゃないことでもあるけど)

これは、人間脳の進化の過程で残った機能だということに、
しみじみと感動した。
個々の脳にノイズは必要。各々の社会にもノイズ(体質の人)は必要。
排除すると、弱くてつまらない集合体になってしまう。


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