Monday, May 30, 2011

あやめ

94歳の祖母に、
「おばあちゃん、アイリスがほら、きれいに咲いてるわ」
と言うと、祖母はしばらく花を見つめてから言った。
「あやめ やな」

普段、使う単語が限られている祖母が、
脳の奥の方から、この単語を引っ張り出してきた。
そう、アイリスは日本語であやめ。

このまっすぐに咲く深紫の花のビジュアル情報が、
祖母の右脳を通って左脳へ届いた。
力強い記憶のさかのぼり。
祖母が生まれ育った家の庭には、あやめが咲いていたに違いない。















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