Wednesday, August 3, 2011

裁かれた命




















裁かれた命 死刑囚から届いた手紙(堀川恵子)

死刑とは、その時代その時代における正義感の表れであると表現されることがある。時代の正義感とは、言い替えれば市民がそれを正しいと指示する道理である。市民の正義感が、社会が定めたルールに違反したものに対してかせられる制裁の基礎となる。
死刑判決はその正義にのっとって、さらには法の下の平等の原則に基づいて、裁判という公正で公平な真理を通して下されるものである。
しかし、かつては死刑とされたものが、今では到底、死刑にはならないとするならば、絶対的な真理である筈の法の下の平等ですら時代によって変わるということか。
正義、とは本来、うつろうものなのだろうか。


読み応えありました。
正義について、裁判制度について、死刑宣告をする人間、執行に立ち会う人間について、刑務所の目的、死刑囚の更生についての問題提議。
それらを、死刑囚から届いた手紙を読み解くことにより、考察し問題をえぐり出していく。

これはまるで、ドキュメンタリーとその解説版の2本の映画を同時に観たよう。手紙、証言、事実の列挙でストーリーが描かれ、その解説がシーンごとにすかさず入る。主役が手紙の場合は、活字メディアに優るものはないと、私は常々思っている。(私は、手紙が好きで、つい映画に使ってしまう。)しかしこの、”手紙、証言、事実の列挙”、力強いです。ビジュアル的です。

人の心が、どんなに複雑か、矛盾だらけか。
そして、どんなに変わるか、変われるか、
変わらないか。



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